香害、化学物質過敏症の無料相談 【クレッシェンドフォルテ】  | 日記 | 厚生労働大臣宛 香料の健康影響に関する調査および 病院・保育園等における香料自粛に関する要望

香害:化学物質過敏症患者を守る。、農薬、柔軟剤,合成洗剤の禁止し有害化学物質の無い世界を。

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香害、化学物質過敏症の無料相談 【クレッシェンドフォルテ】  の日記

厚生労働大臣宛 香料の健康影響に関する調査および 病院・保育園等における香料自粛に関する要望

2019.05.09

2014年1月27日 厚生労働大臣宛   更新日:2017年5月21日
l文部科学大臣 下村 博文 殿
発信: spacer2x2.gif(809 byte)香料自粛を求める会 spacer2x2.gif(809 byte)小樽・子どもの環境を考える親の会 spacer2x2.gif(809 byte)化学物質問題市民研究会 spacer2x2.gif(809 byte)日本消費者連盟関西グループ spacer2x2.gif(809 byte)反農薬東京グループ


香料の健康影響に関する調査および 病院・保育園等における香料自粛に関する要望

 私たちは、化学物質により健康影響を受けている者およびその家族による団体、及び支援団体です。家庭、保育園、幼稚園、学校、職場、病院、福祉施設、公共施設等さまざまな場所における子どもや大人たちの香料曝露による健康影響に懸念を覚えています。  
貴省では、平素より国民のために、健康・医療、子育て支援、福祉・介護、雇用・労働等の厚生労働行政にご尽力くださっていることに感謝を申し上げます。
また特に、私たちにとって身近な問題である室内濃度指針値の設定をはじめ、シックハウス(室内空気汚染)問題等に関する様々な調査・研究、検討会の開催等、化学物質による健康影響の低減にご尽力くださっていることにも感謝いたします。
 近年、学校や病院などで、殺虫剤や農薬暴露による健康影響が問題となり、微量でも人の神経の発達に影響を及ぼすことが明らかになって、殺虫剤や農薬の使用については、法令等の他、通知等によっても人の健康被害を防止する対策がとられるようになってきました。
しかし、農薬以外の化学物質、例えば香料等にも様々な健康影響が懸念され、健康被害の訴えも増えていますが、香料等は、業界による自主規制はあるものの、日本では、具体的な法的規制はなく、香料によって引き起こされる様々な症状に苦しむ人の多くが問題の解決に多大な困難を感じています。憲法第25 条1 項の「生存権」や、憲法第13 条に規定される「幸福追求権」、憲法第27 条「勤労の権利」や教育基本法第4 条「教育を受ける権利」を侵害されてしまう深刻な状況が生まれています。
このような現状に鑑み、2013 年10 月4 日、私たちは、文部科学省あてに「学校等における香料自粛に関する要望」を提出いたしました 。
文部科学省からは、貴省他関係省庁に情報提供をし、貴省と連携して必要な対応について検討していくとの回答がありました。
11 月5 日の参議院厚生労働委員会でも質疑答弁があり、貴省においても「柔軟仕上げ剤の安全確保に努め、製造者の取り組み状況を注視しつつ必要な対応を検討する」との回答を示していただいたところですが、私たちにとっては早急に対応していただきたい深刻な問題です。
また、私たちが香料によって苦しめられている製品は柔軟仕上げ剤だけではありません。

 どうか、家庭や学校、職場等で香料に暴露して健康を害され、健康で文化的な生活を送る権利や教育を受ける権利、勤労の権利が侵害されて苦しんでいる人がたくさんいる現状をこのまま放置せず、必要な対策のためにこれからすべきことについて検討し、まずは実態把握や香料の健康影響に関する調査・研究を行うなど香料の規制に向けて一歩でも取り組みを進めてください。
また、貴省は、保育園や病院、福祉施設等、乳幼児や病人、高齢者など化学物質の影響を受けやすい薬剤弱者が長時間を過ごす施設を所管しています。
どうか、安全で健康を脅かされることなく過ごすことができるはずのこれらの施設で香料に暴露して健康を害されることがないように、今すぐにできる対策に取り組んでください。
 下記の要望をいたします。後述の【理由】をご精読の上、【参考資料及び添付資料】をご参照ください。なお、お忙しいところ大変恐縮ですが、2 月24 日までにご回答くださいますようお願い申し上げます。


1.香料の健康影響に関する啓発や香料の規制に必要な調査・研究を行ってください。
その際、どのような観点からの規制が必要かなどを検討しながら、様々なアプローチを考え、以下のような調査・研究やその他必要な調査・研究を行ってください。

(1)香料暴露による健康被害の実態を調査してください。
柔軟仕上げ剤以外の香料製品による健康被害の訴えについても現状を把握し、柔軟仕上げ剤と同じような配慮を求めることができるよう、今ある健康被害の訴えのデータを整理分析するとともに、医療機関でのアンケート調査や、文科省と協力して、香料含有製品のにおいや香りによる健康被害の有無や症状の内容や程度等について児童生徒へのアンケート調査を実施するなど、実態把握のための調査を行ってください。

(2)芳香剤、洗剤、柔軟剤、シャンプー等香料含有製品の香料含有率やにおいの強さの上限を設けるために必要な調査・研究を行ってください。
 毒性については、香料が多数の香料物質から調合されるため、個別の香料成分の毒性および、調合香料の毒性を調査・研究してください。また、国内・海外文献の収集整理や新たな研究の実施等、特に吸入毒性についての調査・研究を充実させてください。
 毒性試験だけでなく、その製品の使用方法によって異なる、例えば、TVOC の室内濃度暫定目標値や、悪臭防止法で採用されている臭気指数を基にした敷地境界線上のにおいの強さについての規制基準値等を参考にするなど、規制方法に関する様々なアプローチについて検討して、香料や、製品のにおいの強さに関する規制の為に必要な調査・研究を行ってください。また、分解の遅い香料物質や残香性を高める成分についても規制できるよう必要な調査・研究をしてください。

(3)EU 化粧品規則(EC) No.1223/2009  にある香料物質に関する規制で、製品ラベルへの表示の義務付けや、製品中の配合率の上限が設定された香料や配合禁止と指定された香料など、化粧品やパーソナルケア製品等の製品中におけるアレルゲン香料について規制できるよう、必要な調査・研究を行ってください。その際、ガス状や浮遊微粒子状のエアボーンアレルゲンとしての作用について検証するような調査・研究を行ってください。

(4)シックハウス問題検討会で香料を重要なVOC 発生源として継続して検討を行い、香料物質について室内濃度指針値を設定することができるよう、必要な調査・研究を行ってください。

(5)アロマテラピーを医療行為として位置づけ、アロマ商品を雑貨として安易に販売、使用させないように規制できるよう、必要な調査・研究を行ってください。

(6)香料の健康影響について、EU がウェブサイトに掲載している一般向けの香料アレルゲンに関する啓発ページやカナダ職業衛生安全センターが勧めている職場の無香料方針の啓発ページやポスター、カナダ肺協会の香料の健康影響の啓発ページや職場の無香料方針の啓発ビデオなど今すぐに活用できる情報を参考にして、リーフレットやビデオ等啓発用資料の作製やウェブサイトでの啓発が行えるよう、また、職場での香料自粛の奨励や啓発についてもカナダ政府と同様の取り組みが行えるように、必要な情報収集や調査・研究を至急行ってください。

2.以下の内容について、各自治体の保育園及び病院、福祉施設所管部署にご指導ください。
その際、基準またはポスター案などの参考を例示してください。

(1)保育園、病院、福祉施設で働く職員等関係者や施設利用者、来訪者、保育園児や児童福祉施設等を利用する子どもたちおよび保護者等に、強い香りの着香製品の使用を自粛するように呼びかけてください。
その際、化学物質過敏症やアレルギー、喘息、咳喘息、偏頭痛、抗がん剤治療中の方や妊婦など、香料によって症状を誘発される人がいること、アレルギーや喘息の発症者が増えていることや、保育園や病院、福祉施設等は強い香りの香粧品をつけてくるような場所ではないことなど理由についても啓発してください。
 なお、病院においては、職員の服務規定により、香水や衣類用芳香剤等主に着香を目的とする製品の使用を禁止し、化粧品や整髪料、制汗剤、着衣の洗濯用洗剤等についても原則として無香料の製品を使用することとしてください。

(2)添付資料のポスター要望案(各施設共通イメージポスター、病院・福祉施設用、保育園・児童福祉施設等保護者向けチラシ兼用)をもとに「香料自粛のお願い」のポスターを作成し、当該施設の出入口付近、玄関、建物内の掲示板や行事案内立て看板等に掲示して関係者に啓発をはかるとともに、保育園や児童福祉施設では、年度初めにポスターの内容をチラシ(ポスター縮小版)として保護者に配布し、行事等の案内文書に来園時の注意事項として香料自粛の配慮を求める文を記載してください。
 なお、病院や福祉施設では、入院患者や入所者に対する「入院・入所に際しての案内」等に、注意事項として香料自粛の配慮を求める文を明記してください。

(3)都道府県および市町村の保育園、病院、福祉施設所管課や関係施設のホームページを通じて、関係施設における香料自粛について啓発してください。

(4)保育園、病院、福祉施設では、芳香剤や、清掃業務において香料を含む製品を使用しないでください。
手洗い石鹸や、シーツ等寝具やカーテンなどの洗濯用洗剤等も無香料の製品を使用してください。
また、売店のある病院、福祉施設では、石鹸や洗濯洗剤など、香りの強い製品は販売せず、無香料の製品を取り扱ってください。

(5)建物内に香料臭が充満することがないよう、普段から空気質に配慮し、冷暖房の使用中も換気に留意するなど、毎日の換気を徹底してください。
また、職員等にも、換気をしない場合の室内空気汚染のリスクや換気の必要性等の情報を伝えて、季節を問わず換気の励行を呼びかけてください。

(6)病院、福祉施設等において、アロマディフューザー等を使用しないでください。
治療目的でアロマを使用する場合は、他に影響を及ぼさない限られた空間でのみ使用してください。
3.香料・着香商品メーカーに対し、ウェブサイトやテレビCM、商品ラベル等での注意表示や啓発活動など、国民生活センターが柔軟仕上げ剤に関して要望した「においが与える周囲への影響について配慮を促すような取り組み」が着実に実践されるよう、取り組みが不十分なメーカーに対して指導してください。
また、店頭販売での香りサンプルの展示の仕方など、メーカー自身が「においが与える周囲への影響について配慮する」よう指導してください。
以上

【理由
香料製品の氾濫と健康被害の増加  
私たちの生活環境は、洗濯洗剤・柔軟剤・石鹸・ボディシャンプー・シャンプー・整髪料・制汗剤・汗ふきシート・化粧品・香水・アロマオイル・衣類用芳香剤・家庭用/車用芳香剤・消臭剤・防虫剤・虫よけ剤・清掃用洗剤・浴用剤・除湿剤など着香製品への香料依存が強まり、子どもも大人も日常的に香料に曝されるようになってきました。

特に柔軟剤市場はこの数年右肩上がりに伸びており、各メーカーが残香性を高めた製品を開発、製品中の香料も増量して強い香りが長く続く製品が増え、さらに最近は洗濯後乾燥機使用時や収納時に使用する衣類等への着香のみを目的とした製品まで登場しました 。

衣類用洗剤、柔軟剤などは、香水等着香のみを目的とする製品と異なり、使用者自身が着香について無自覚となりやすく、特に注意が必要です。
 現在、大勢の人たちが、香料で健康被害を受けています。
参考資料を見てください。
香料で健康影響を受けるのは化学物質過敏症の患者だけではありません。
アレルギー、喘息、偏頭痛の患者など、香料等によって症状が引き起こされる可能性のある疾患に苦しむ人は大勢います。
 
環境省は今年6月に始まった女性クールビズで柔軟剤や制汗剤等の使用を推奨していましたが、健康被害を受ける人が増えるとの市民団体等の多数の声を受けて、すぐに着香製品の推奨を撤回しました。  
医薬食品局の「家庭用品等に係る健康被害病院モニター報告」によれば、近年、芳香・消臭・脱臭剤の吸入事故等の報告件数が、年度により減少もありますが増加し続け、平成12 年度の44 件から、17 年度には80 件を超え、23 年度は105 件とこの10 年で倍増しています。  

消費者庁と国民生活センターの事故情報データバンクにも、「柔軟剤」や「合成洗剤」、「芳香剤」などの「香料」による健康被害の訴えが数多く報告されています33)。
例えば、「柔軟剤」で検索すると、2009 年からの累計で、2013 年9 月19 日時点で128 件もの事故情報が確認でき、新聞報道によると2009 年は5 件、2012 年は48 件と急増したとのことですが、今年はさらに増加しています。
 
柔軟剤による体調不良や健康被害に関する新聞報道が続いていたところ28)、9 月19 日に国民生活センターの「柔軟仕上げ剤」に関する報道発表があり、多くのメディアが取り上げました。相談内容で危害情報の件数が急増、体調不良や呼吸器障害などの危害が91%を占めており、同センターは、消費者への注意喚起をするとともに、業界にも「(商品の注意表示や啓発活動など)においが与える周囲への影響について配慮を促すような取り組みを行うよう」求めました 。

2012 年に実施した商品テストでは、洗濯物を室内に干した際の室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)を分析すると、いくつかの成分は香料原料や香料の溶剤として使われる化学物質と推定され、総揮発性有機化合物(TVOC)の室内濃度上昇分は、強い芳香の製品が微香の製品より3.5 倍から7 倍も高く、最も濃度が上昇した製品では、一定の換気がされている状態で干してから1 時間後に厚生労働省の定める室内濃度の暫定目標値400μg/m3 の3 分の1 を超えていました。
 なお、この報道発表後、健康被害の訴えがさらに増加し、平成26 年1 月8 日現在、事故情報データバンクの柔軟剤に関する事故情報は279 件にまで増加しています。

 特に、強い香りの洗剤や柔軟剤等のコマーシャルが目立つようになるに伴い、町中に様々な芳香臭があふれるかのようになってきました。
今回の要望書提出にあたって、香料への暴露体験事例を募集したところ、3 週間ほどで、10 代から80 代の方まで47 事例(家族も含め51 人の事例)が集まりました。

40 代~50代の女性が多く、男性も少ないですが各年代にいます。
 各地に、学校の教師や保護者の香水や化粧品、友達の柔軟剤や制汗剤の香料に暴露して苦しんでいる子どもたちや、職場の同僚の香水や柔軟剤、近隣の洗濯物の洗剤、柔軟剤やシャンプー等の香料などに曝露して苦しんでいる人、香料への暴露のために病院や介護支援の利用、外出や公共交通機関の利用が困難で困っている人がたくさんいます。

 添付資料の「香料暴露体験事例集」をご覧ください。
様々な場所で香料暴露に苦しんでいる、一日中香料暴露から逃れることができない、と訴える人が何人もいます。強い香りの柔軟剤の発売以降に発症した、長年香料暴露に苦しんでいるが特にこの数年で酷くなった、生活上の支障が大きくなったという声もたくさんあります。
いつまでもにおいが残る、洗濯をしても移り香がとれない、香りが長く続く残香性を高めた製品が増えていることも問題と感じている人もいます。

 子どものとき、若いときから今日まで暴露が続いている、一年を通して曝露されない日がないという人も多く、次のような訴えがありました。
「道を歩いていていると側溝や家、公共施設、病院、床屋や美容院、スーパーや銭湯等の入浴施設、コインランドリー、通風孔から漏れてくる匂いを浴びる。
屋内にいても家の排水溝や窓から、よその洗濯物や入浴時の芳香臭が入ってくる。
乗り物の中でも、待ち時間にも、皆が使っている香料を浴びる。

他にも、朝起きて近隣の洗濯物の洗剤や柔軟剤のにおいが家の中に流れ込む、学校や職場でも香料に一日暴露し疲弊して帰宅して、自宅でも服や髪の毛にまとわりついた移り香がいつまでも残って苦しい、シャワーを浴びてもカバンや持ち物に付いたにおいはとれない、衣類は洗濯しても移り香がとり切れない、夜には近隣の入浴時のシャンプー・リンスのにおいが押し寄せて、換気もできない、眠れない…。

このような状況では心も体も休まる時があろうはずがありません。
長期間そのような状態が続いた後に本格的に体調を崩したなど、香料で過敏症を発症したと思われる方もいます。

 ご近所の方の理解を得るのも難しいところがあり、お願いが功を奏した事例もありますが、お願いしてもすべての方に理解していただけるわけではなく、近所トラブルが怖く申し出られないという方や、健康上の理由や事情を伝えても全く理解されず毎日毎日苦しんでいると訴える方もいます。
 職場の理解を得ることもやはり難しく、軽症の方や今何とか体調を維持して働いている方も職場での香料暴露や移り香への対策に疲れたり困ったりしている様子がうかがえます。

化学物質過敏症になって仕事を辞めた、芳香臭を避けられず外で働くことができない、あらゆる場所で移り香がして働けない、香料ブームになって以来無職のまま、働きたいのに働けないという声は多く、会社から香料を避けて働く場所はないと言われ自主退職したことを無念と訴える方もいます。
 患者もできる限り症状を悪化させないように生活上の工夫をしていますが、生活上の支障、困難を感じている人はたくさんいます。外出して帰宅後は、服や髪の毛をすぐに洗わないといけない、においがとれるまで何度も洗濯しなければならない、そうしなければ長時間苦しむことになると訴える人も多く、スーパーなどに買い物に行けない、宅配での取り寄せも、宅配業者、配送担当者の柔軟剤やシャンプー等の香料に暴露する、届く荷物にも柔軟剤等のにおいが付着している、外出そのものが困難、公共交通機関を利用できないなど、日常生活でも大変困っており、その不自由さは想像を絶するものです。

 病気や怪我のときなど、身体が弱ったりダメージを受けたりしたときに病院を受診しなければならないこともありますが、病院の室内空気も香料で汚染されていて、他の患者さんの洗剤や柔軟剤、シャンプーなどのにおいが漂い、マスクをつけていても苦しく気分が悪く、待合室にいられない、医師や看護師、療法士など医療スタッフでも香料を使用している人がいて、息苦しさ、気分の悪さ、皮膚のかゆみなどの症状が出て、診察を受けるのにも苦痛を伴う、入院中、白衣やシーツ、カバーなど寝具の洗剤の香料臭や他の入院患者の使用する、整髪料や香料入り石鹸、芳香スプレー、においの強い柔軟剤などで苦しむ、病院のトイレの芳香・消臭剤で苦しい思いをした…病院での香料暴露についてたくさんの声が寄せられました。

 病院や福祉施設のように体調が悪い時など必要があって利用しなければならない施設の場合、問題は深刻です。
病院でアロマをたくところが増えて大変という声もありました。
ドラッグストアのマスクや処方箋薬局で処方された薬の容器の移り香にも困っている人がいます。  さらに、介護現場ではケアマネージャーやヘルパーの援助が必要不可欠ですが、担当者の柔軟剤やシャンプー、汗ふきシート、制汗剤などで頭痛や吐き気、気道狭窄など様々な症状に見舞われ、必要な支援が受けられずに困っている人がいました。

これは自宅での介護の事例ですが、病院と同じように、福祉施設も、介護やケアの必要性があって利用する施設です。
老後に施設を利用することができないかもしれないと不安に思う声もあります。
 体験事例を提出できなかった会員で介護施設を退出せざるをえなかった例もあります。
障害児・者や高齢者などやはり化学物質の影響を受けやすい人々が長時間を過ごすため、病院と同じように薬剤弱者への配慮が求められる施設ではないでしょうか。

 保育園児の事例はありませんでしたが、ボランティアで訪れた方は保育園の体育館の中の芳香臭で中にいられなかったそうです。
保育園に通う乳幼児は、自分で正確に症状などを訴えることができません。アレルギー症状の悪化など目に見えてわかる症状の発現がなければ、小さな子どもは、ぐったりするほど重い症状であれば別ですが、頭痛や気分の悪さを言葉で伝えられなかったり、落ち着きがなくなるなど行動の変化として現れたりするため症状の発現がわかりにくい、症状と香料との関連性も気づかれにくいため顕在化しにくいという問題もあります。

学校で子どもたちにおきていることは幼稚園や保育園、児童福祉施設などでもおきている可能性があり、周りの大人が子どもたちに香料による健康影響が出ていないか気を配る必要があります。
  子どもの事例は文部科学省宛て要望書2)も参照してください。
添付資料の新聞記事もご覧になってください。

 いつ、何が、発症や重症化の引き金になるかわからず、取り返しのつかない事態になることもあります。柔軟剤の香りがきっかけで、光に過敏になり暗い部屋に閉じこもることになった人がいます。教師の整髪料や生徒の制汗剤、机にかけられた香水、来校した卒業生の香水など、香料や香水に繰り返し暴露し、寝たきりになるほど重症化してしまった生徒もいます。

 化学物質過敏症の患者の80%以上が症状を誘発するものとして香料をあげていますが、発症や重症化の原因ともなりうるものです。
化学物質過敏症は、重症化すると外出が困難になり、日常生活にも困るだけでなく、教育の機会を奪われ、就職や将来の仕事の夢や可能性も狭められてしまう、本当に深刻な病気です。

 大学の下見をしてとても通うことができないと進学をあきらめ、息が苦しくならず症状が出ることなく働ける就職先を探しても難しく、自分の力で道を切り開いていこうとして いる人もいますが、大変険しい道のりです。
シックスクールで化学物質過敏症を発症した学校職員や教員もいますが、大人になってから職場で発症した人にとっても、再就職や職場の理解を得ての復帰は困難を極めます。
 文科省の健康調査でも喘息やアレルギーの)児童生徒が増えています。特に子どもは化学物質への感受性が高いとされており、シックハウス症候群や喘息、アレルギーのお子さんなど化学物質過敏症を発症するリスクの高いお子さんも相当数いると思われますが、いつ何時どこかで香料暴露が発症や重症化の最後の引き金にならないとも限りません。
また、大人であっても、現在、喘息やアレルギー、慢性病に罹患している人など、化学物質の影響を受けやすい人々はたくさんいて、香料によって発症するリスクを抱えています。

香料の健康影響と安全性に関する問題
香料には安全性に関する問題もあります。
香料にはアレルゲンとなる物質が多く皮膚炎や喘息を誘発し、また偏頭痛を誘発するほか、神経毒性や内分泌かく乱作用、変異原性、発がん性、発がん促進作用や異物排出能力阻害作用などを有するものがあり、香料あるいは香料を含む製品のすべての安全性が担保されているわけではないのに、多くの人はそのような認識を持っていません。

香料は、人間の鼻腔の深部まで送り込まれ、匂いとして感じられることによって効果を発揮する、すなわち被曝することを前提として作られている複合化学物質です。
10種から数百種もの物質を混合し溶剤を添加して処方されていますが、製品での表示は「香料」と一括表示が認められ成分を明らかにしなくてもよいことになっており、安全性は業界の自主基準である国際香粧品香料協会(IFRA)の「IFRA スタンダード」を遵守することで担保されると考えられているだけです。

また、化粧品などの安全性保証は、企業の自己責任に基づいて行うことにしかなっておらず、薬事法の「化粧品基準」(平成12年9 月29 日厚生省告示第331 号)にも「香料」に対する明確な規制はありません。
EU の化粧品に関する規制「EU 化粧品指令:76/768/EEC」(※2013 年7 月11 日以後は「EU 化粧品規則(EC) No.1223/2009」に移行、各国に法制化を求めていたものがEU 共通の直接規制となる)では、香料に関して26 種の物質をアレルギー物質として、製品ラベルへの表示を義務化しています。
これは、欧州委員会の科学委員会の1 つSCCNFP(現SCCS、消費者安全科学委員会)の1999 年の意見書を受けて2003 年の改定で盛り込まれた もので、同委員会は、その後も調査を継続し、2012 年にアレルゲンとして確定された82種類と動物実験で確認された19 種類、アレルゲンの可能性の高い26 種類の計127 種類の物質について、製品ラベルに表示すべきであるとの意見書を提出しました 。

その中で特に注意が必要な12 種類の物質は化粧品等の製品への配合率を0.01%以下とすること、その中の1 種類の化学物質とこれまでに確定された2 種類の天然香料とその主たる香気成分について配合禁止とすることを提言しています。また、その他のアレルゲンの可能性がある物質48 種類もリストアップして、今後接触アレルゲンかどうか判断するためにさらなるデータが必要であるとしています。
 IFRA スタンダードでも、香料の他トルエンやベンゼン等の溶剤も含めた原材料について、使用禁止物質80 件を定めている他、使用制限物質102 件で配合量の上限を設けています。
しかし、化粧品やシャンプー等に含有される香料は0.1~1%程度であるのに、それでも抗原性の強いアレルギー性接触皮膚炎を頻繁に起こす香料や、天然香料にも陽性率の高い要注意の香料があり、日本皮膚科学会の接触皮膚炎診療ガイドラインにおいても、化粧品による接触皮膚炎の原因物質としてパラベンやホルムアルデヒドとともに香料があげられ、原因解明に有効な検査であるパッチテストで複数の香料成分を含む試料が用いられています。

業界の自主基準のみに依拠している日本では、そのようにアレルゲンとして特定されている物質が、表示義務もなく何の規制もなく流通しています。近年の動 向をみても、香りの強い製品が売れ始めると簡単に製品中の香料の含有量を上げるなど、香料業界は、このような現状で本当に自主規制しているといえるのでしょうか。

 また、香料は成分が揮発して呼吸で体内に取り込まれるのに、吸入毒性についてほとんど検討されていません。厚生省生活衛生局の「芳香・消臭・脱臭・防臭剤安全確保マニュアル作成の手引き」(平成12 年3 月発行)では、
「6.過去の健康被害事例について(4)文献等からの情報」の項で、香粧品香料素材の安全性について業界のガイドラインは示されているが、「神経機能障害性や内分泌かく乱作用についてはまだ十分研究されておらず、今後の研究課題となっている」ことや、「一般的に気散する成分を含む製品(例えば化粧品、香水、殺菌剤、抗菌製品、芳香剤、いわゆるアロマセラピー用精油など)はその成分が顔面などの皮膚について吸着濃縮され、airborne allergens (*空気中のガス状や浮遊微粒子状のアレルゲン)となる可能性も考えられている」こと、「製品から気散した成分は主として吸入によって体内に摂取されると考えられるが、成分の吸入による毒性が検討されてい る場合は少ない」ことに触れています45)が、13 年経った今もその状況はほとんど変わっていません。
 着香製品にはさまざまな揮発性物質が含まれており、リモネンやエタノール、アセトン等が検出される他40,46)、中にはアセトアルデヒドやホルムアルデヒド等の有毒な化学物質を発生する製品もあり46)、様々な製品を使用している人が多数集まって過ごす室内では、それだけ多くの物質により室内空気が汚染されます。香料等によってつらい症状が出る人にとって受動被曝の問題は深刻ですが、また、香りは個人的な嗜好もあるため、それらの香りを好まない人にとっても受動被曝により不快感やイライラ、集中できないなど心身にマイナスの影響が生じることも考えられます。香料で症状が引き起こされる自覚のない人であっても、室内空気汚染により健康を害される可能性があります。
 香料の健康影響については、一般的疑わしさや懸念があるだけの状況ではなく、研究レベルでの実証も進みつつあり、EU では香料規制の強化に結び付くなど、政治的な動きはこれから更に国際的な流れになっていくはずです。
アレルゲン物質も多く、遺伝毒性、発がん性等を有するものもある香料について、安全性審査を充実させ、無制限に宣伝させないようにすべきであり、日本も業界の自主規制に任せて野放しになっている香料製品の氾濫に歯止めをかけるよう規制に乗り出すべきです。

香料の規制に向けて必要な調査・研究を
 EU 化粧品規則(EC) No.1223/2009 のように、すでに諸外国が規制していることは、日本でも対応すべきで、アレルゲン香料の製品ラベルへの表示の義務付けや製品中の配合率の上限の設定、特にアレルギーを起こす頻度が高い物質の配合禁止等をすぐにも検討すべきです。
ただ、接触アレルゲンとしてだけでなく、airborne allergens として喘息等の症状を引き起こす懸念や吸入毒性についても検証する必要があります。
 また、化粧品やパーソナルケア製品以外の洗剤や柔軟剤、芳香剤等の製品についても、香料の成分表示や配合率の規制は必要です。洗剤や柔軟剤は洗濯物に残留して接触アレルゲンとなる可能性もありますが、揮散してairborne allergens となる可能性もあります。

 洗剤や柔軟剤を使用した洗濯物を室内干しする場合は、芳香剤のような室内空間に香料物質が放散される製品と同じく、室内空気を汚染するVOC の発生源になります。

吸入毒性についても検証して室内濃度指針値を設けることや、また、他の発生源から発生するVOCと併せて、TVOC の室内濃度暫定目標値を超えないようにするための規制も検討する必要があると思います。
 貴省は「シックハウス問題検討会」の報告書「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会中間報告書-(第4回~第5回のまとめについて)」(平成12 年12 月)の「室内空気質指針値の適用範囲の在り方について」で、以下のように述べています。

「本検討会で策定される指針値は、生産的な生活に必須な特殊な発生源がない限り、あらゆる室内空間(下記)に適用されるべきである。」そして、あらゆる室内空間として、「住居(戸建、集合住宅)、オフィスビル(事務所、販売店など)、病院・医療機関、学校・教育機関、幼稚園・保育園、養護施設、高齢者ケア施設、宿泊・保養施設、体育施設、図書館、飲食店、劇場・映画館、公衆浴場、役所、地下街、車両、その他」があげられています。

 香料製品が氾濫する中、私たちはすでに、こうした長時間を過ごす様々な場所で香料に暴露し続けており、香料が室内空気質に与える影響についても調査・研究を行うことが急務と考えられます。
 また、特に残香性の高い商品については、多くの人がそのために暴露が長引き一日中香料に曝されることになり苦しんでいます。
その成分の分析や香料の分解速度に与える影響などの調査をおこない、香料として分解に時間のかかる物質や助剤として香料物質の残留性を高める物質を使用しないなどの規制を設ける必要があるのではないでしょうか。
 なお、においを感じることができる最低限の濃度である閾値はにおい成分ごとに異なり、低い濃度でもにおいを感知できる成分もあれば、高い濃度にならないとにおいを感知できない成分もあって、濃度とにおいの強さの関係が一定ではないため、一部の香料物質について、例えばアレルゲンとしての強さや毒性学の観点から香料成分の配合率の上限や室内濃度指針値を決めても、それが香料製品の「においの強さ」の規制にはならない可能性があります。

 因果関係の検証はまだであっても、柔軟剤等のにおいが強い製品の販売の伸張に伴って健康被害の訴えも増加していることから、香料含有製品の「においの強さ」が一定程度以上に強くならないように香料の配合率の上限を設ける規制についても検討する必要があると考えられます。

国内法による「においの強さ」の規制としては、事業者を対象とする悪臭防止法で、「臭気指数を基にした敷地境界線上のにおいの強さについて規制基準値」が設定されていて、「におい」の規制方法について検討する際に参考になる考え方と思われます。

臭気指数は、人の嗅覚で測定するもので、においの強さ(臭気強度)に関係性があって、臭気指数の値(においのついた空気をにおいが感じられなくなるまで薄めたときの倍率を基に算出された値)が高い方がにおいの強さも強いということになります。

 隣家の洗濯物から漂う柔軟剤のにおいが敷地境界線上ではどのくらいになるのか、実際の空気の測定値(臭気指数)はわかりませんが、神奈川県消費生活課が「柔軟剤のにおいの比較調査」で調べた、測定機器によって計測分析された「臭気指数相当値」が参考になると思われます。
サンプルの採取方法の違いもありますが、15 検体中13 検体の数値が22~28 と非常に高く、実際の使用状況で敷地境界線上の規制基準値(自治体によって異なり住宅地等で10~15)を超えるにおいである可能性が高いと考えられます。

香料含有製品の開発の段階で、香料成分や調合香料の臭気指数相当値を基に、通常の使用方法でこの基準値を超えない程度のにおいの強さになるように製品中の香料の配合率を決めることはできるのではないでしょうか。
メーカーが自主的に取り組まないのであれば、関係省庁により何らかの方法で製品のにおいの強さについて規制すべきと考えます。
 規制の方法については様々なアプローチについて検討し、香料による健康被害の発生を低減しうる実効性のある規制を導入してほしく、そのために必要な調査・研究を行っていただきたいと思います。

薬剤弱者のために今すぐにできる対策を
 一方、仮にすぐに国として規制導入に向けて取り組んだとしても、基準等の策定までには時間を待たねばなりません。
すでに香料暴露に苦しんでいる多くの人がいて、新たな健康被害の発生も続いており、法令等の整備が未だ整わない現状では、公共の施設や公共輸送機関など公共の場では香料や消臭剤の使用を抑制あるいは自粛するようにする必要があり、貴省でできることとして、特に、子どもや高齢者、病気の方など薬剤弱者が長時間すごす施設における「香料自粛の取り組み」を進めていただきたいのです。
   今の香りの強い柔軟剤ブームの火付け役となったのは米国製柔軟剤ですが、米国でも着香製品による健康被害が深刻化し、各地で香料自粛の取り組みが拡がっており、自治体によっては香料禁止方針や職員の香料自粛の行動指針を示しています。

 また、カナダのノバスコシア州の州都ハリファックス地域都市は無香料の啓発プログラムを実施、2000 年には「香料不使用の方針(No Scent Policy)」を市の職場から自治体施設の公共スペースに拡大することを評議会で承認して、法による規制ではないものの公共施設での香料不使用の取り組みを自治体として奨励しており 、施設のホームページでも着香製品不使用のお願いや香料の問題に関する啓発がされています。

学校や図書館、バスでの着香製品の自粛など、この動きはノバスコシア州にも拡がっているそうです 。  
カナダでは政府関係法人が職場での無香料方針の採用を奨励しています。政府と労使の三者から成る政労使委員会が運営するカナダ労働衛生安全センターは、香料の健康影響に関する情報や、職場の無香料方針採用に向けての対処方法や啓発方法の具体例等をウェブサイトで紹介し、ニュースレターへの啓発記事掲載、啓発ポスターの掲載・販売や、職場の無香料方針採用を推奨する非営利団体カナダ肺協会の資料紹介など、職場での無香料方針を勧める様々な啓発をしています。カナダ肺協会は市民からの寄付とボランティアを基盤とした保健慈善活動団体で、加盟する各地域の肺協会とともに肺の健康のための調査、啓発、予防及び政策提言を行っており、香料の健康影響や香料暴露を避ける方法等についてウェブサイトで啓発し、職場の無香料方針採用のためのパンフレットやポスター、ニューブランズウィック肺協会製作の啓発ビデオやポスター などを紹介しています。

カナダで無香料方針を実施する職場や学校、病院は増え続けているとのこと で13,14)、例えば、オンタリオ州のトロント大学やウィメンズカレッジホスピタルなど、ノバスコシア州以外の地域でも無香料方針採用の動きが広まっています 。
国の関連機関や施設でも、例えば穀物委員会や空軍医療施設が来訪者などに香料不使用を求めたり、国立図書館・公文書館が利用規約に無香料環境を奨励支持する旨を明示したりしています 。

 日本で先進的に取り組んだのは岐阜市です。「香料自粛のお願いポスター」を全市的に掲示して呼びかけるキャンペーンを始めたのが2005 年で、その後2008 年から2009 年頃に、岐阜市のポスターや公共の場での香料自粛を初めて呼びかけた水郷水都全国会議での掲示ポスターの文面等を参考に、各地の自治体で独自のポスターが作られ、ホームページで呼びかけたり、各地の学校や病院、公共施設等でポスターを掲示したりする動きが拡がりました。  
岐阜市や岐阜県は、香料の影響はすべての子どもたちの健康に関わる問題ととらえて、過敏症の子どもが在籍している学校だけでなく、各施設や各学校にポスターを掲示するよう通知を出しています。
岐阜市は全施設を対象に、岐阜県は学校の他、医療機関と福祉施設も対象に通知を出してポスターの掲示を勧めています。
 しかし、多くの自治体では、基準となるポスターをHPにアップして掲示を勧めていても通知発出の対応はほとんどなく、掲示は各施設の判断に任されています。
また、ポスターの掲示だけでは改善されないという実態もあり、香料の健康影響について保育園、病院や福祉施設など関係者の認識を深めるための啓発や、香料自粛を進めるための他の啓発方法等の工夫が必要です。

 各地に香料暴露に苦しむ人たちがいること、アレルギーや喘息、シックハウス症候群の人など、いつ香料暴露により化学物質過敏症を発症するかわからない子どもや大人もたくさんいること、香料が発達途上にある子どもたちに健康上の悪影響を与える可能性があることなどをまず一人でも多くの方に知っていただきたいと思います。薬剤弱者と関わる職に就かれている方にはその認識をもって、香料をできるだけ控えていただくことも必要です。施設として、また、職員の方たちにも香料自粛に率先して取り組んでいただけるように、基準や参考を示していただけないでしょうか。
 なお、ポスター案等の基準を示す際には、どうか、定義や説明は正確な表現で、誤解を与えないような表現にしてください。
岐阜市や岐阜県教育委員会のポスターをはじめ現在多くの自治体で掲示されているポスターでは、化学物質過敏症の定義に関する記載が不 十分ですが、広島県や岡山県倉敷市など一部の自治体で、厚生科学研究「化学物質過敏症に関する研究(主任研究者:石川哲北里大学医学部長(当時))」(平成8年度)で示された定義「最初にある程度の量の化学物質に暴露されるか、あるいは低濃度の化学物質に長期間反復暴露されて、一旦過敏状態になると、その後極めて微量の同系統の化学物質に対しても過敏症状を来たす」に準拠して見直され、一度に多量の暴露によるだけでなく微量でも長期間の反復暴露によっても発症することの両方について記載があるポスターがあります。
 
化学物質過敏症の名称や概念については議論があり、平成15 年度に厚生労働省で開催された室内空気質健康影響研究会により、既存の疾病概念で説明可能な病態を除外する必要性等があるものの「微量化学物質曝露による非アレルギー性の過敏状態」を示す病態の存在は否定できないとして、病態解明や感度や特異性に優れた検査方法、診断基準の開発等の研究の更なる進展が必要との見解が示されています71)。

報告書において、現状では混乱があるとして精度を高める必要性は指摘されていますが、「日本では石川らの提唱する『化学物質過敏症』が一般に使用されている」と述べられており、その後、平成21 年10 月には、標準病名登録マスターに「化学物質過敏症」が病名として登録されました。
今後も研究の進展が望まれますが、現在のところ、一般には、石川らが提唱した概念、定義の大意が継承されて病名として使用されていると考えられます。
 岐阜市をはじめ多くの自治体のポスターでは、「最初にある程度の量の化学物質に曝露して過敏状態になる」ことについては記載があっても、「低濃度の化学物質に長期間反復暴露して過敏状態になる」ことについて記載がなく、実態を表す正確な表現と言えないため、見直していただく必要があります。
 また、アレルギーや喘息、咳喘息、偏頭痛の方など香料によって症状を引き起こされる恐れのある人は他にもいるのに、「化学物質過敏症の方に『とっては』」と、香料により症状が引き起こされるのは化学物質過敏症の患者だけであるかのような誤解を与える表現になっていることも問題ですが、これも見直した施設があります。

さらに、香水等着香のみを目的とする製品以外に強い香りを放出する製品が増えている現実に対応して、「柔軟剤」や「洗剤」「シャンプー」の強い香りに関する注意喚起が必要で、要望案のように、現実や実態に即した誤解を与えない正確な表現のポスター案を示していただく必要があります 。
 なお岐阜市は、上記問題点を見直し文章表現を変更する方向でポスターの改訂を検討しています。
 貴省は前述の「室内空気質指針値の適用範囲の在り方について」の中で、「特に弱者(小児、高齢者、妊婦、病人など)が暴露される可能性の高い空間においては、積極的な空気質管理が求められ、当事者による継続的なモニタリングによってその効果を高めていくべきである。」と述べています。
 また、文科省は、パンフレット「健康的な学習環境を確保するために-有害な化学物質の室内濃度低減に向けて-」(平成23 年3 月発行、以下、「パンフレット」)や、参考資料「健康的な学習環境を維持管理するために-学校における化学物質による健康障害に関する参考資料-」(平成24 年1 月発行、以下、「参考資料」)等を通して、主な化学物質の発生源となる可能性のある日用品として芳香剤、消臭剤、洗剤等をあげて、清掃で使用する洗剤も「化学物質が発生しない、又は、発生の少ないものを選定することが必要であること、また、洗剤や消臭剤も放散源となる可能性があり、備品の購入に際して注意が必要であることや、芳香剤・消臭剤は可能な限り使用しないようにすることなどを示しています。
保育園や病院、福祉施設等でも、室内空気質に配慮し、同じように取り組むべきではないでしょうか。

国がメーカーの対応を待つ今も多くの人が苦しんでいる
9 月19 日の国民生活センターの報道発表から4 か月が経過しました。
「柔軟仕上げ剤」に関して、国民生活センターが業界団体に求めた「(商品の注意表示や啓発活動など)においが与える周囲への影響について配慮を促すような取り組み」のひとつとして、ウェブサイトで周りの方への配慮を求める注意書きが記載されるようになりましたが、メーカーによっては商品紹介ページに注意表示がなく見つかりにくいことや、使用量の2 倍を上限に使用量を増やしてもいいというアドバイスが掲載されたままであることなど、なかなか改善されない状況が続きました。
 その後、国民生活センターや貴省からの指導もあり、12 月に再度確認すると当該メーカーのウェブサイトでのアドバイスが削除され、また、テレビCM でも「周囲の方への配慮」を促す注意表示が見られるようになりましたが、メーカーによっては、文字がとても小さく、色も目立たず、時間も短くて、注意して見ようと思っていたにもかかわらず文章を読み取れないほどのものもあります。
また、私たちが確認しているところでは商品ラベルでの注意表示の改善が進んでいるとはとても思えません。
 最近、スーパーなどの店頭販売で製品毎の香りサンプルを置いて販売し始めたメーカーがあります。
すべての製品サンプルから香料成分が漂って、食品や周囲の紙製品などを汚染しており、以前より買い物が困難になったと訴える会員がいます。
この香りサンプルは、購入を考えてにおいを確認したいと思った必要な人だけが確認できるように蓋付きの密閉できる容器を利用するなど、メーカーは自ら「製品のにおいが与える周囲への影響について配慮」すべきではないでしょうか。

 また、スプレーや、シート状、ビーズ状の衣類用香り付け製品や洗剤、シャンプーなどにもにおいの強い製品がありますが、それらの製品についても同様に、周囲の人への配慮を促す啓発が必要であるのに、放置されています。貴省がメーカーの取り組みの様子を注視している今も、多くの人が香料への暴露に苦しんでいます。

 今すぐできる対策として、まずは、子どもや病人、高齢者など化学物質の影響を受けやすい薬剤弱者が長時間を過ごす施設で、誰もが香料によって健康を害されることなく、安心して過ごすことができるように、ぜひとも保育園、病院および福祉施設における香料自粛の取り組みを進めていただきたく、また、様々な場所にあふれる香料の暴露に苦しんでいる人の声を受け止め、香料による健康被害が拡大しないための対策として、香料や香料含有製品への規制を導入するために必要な調査・研究を早急に行っていただきたく、上記の要望をいたします。


厚生労働大臣宛  香料の健康影響に関する調査および 病院・保育園等における香料自粛に関する要望

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